先天性欠如
先天性欠如とは生まれつき歯の本数が少ない状態のことを言います。 正常な歯の本数は、乳歯は上下合わせて20本、永久歯は親知らずを除くと28本ですが、先天性欠如では乳歯や永久歯の一部が欠けていることがあります。 先天性欠如は、10人に1人の割合で見られると言われており、歯並びや噛み合わせに影響を与えることがあります。
先天性欠如の原因
・歯胚(しはい)が作られない
歯胚とは、歯の芽となる細胞の集まりで、胎生3カ月半頃から形成されていきます。 歯胚が何らかの理由で作られないと、その部分には永久歯が生えてこないことになります。 乳歯も同様に、胎生7週頃から歯胚が作られますが、作られない場合は乳歯が欠如します。
・遺伝や母体環境
遺伝的に先天性欠如を持つ家系があることが報告されています。母体環境としては、妊娠中の栄養不足や感染症、薬物の副作用などが影響するともいわれていますが因果関係は解明されておらず、予防する方法も確立されていません。
・組織形成異常
先天性欠如は歯の形成過程で何らかの影響を受け異常が発生した場合の組織形成異常の一種ともいわれています。組織形成異常は、遺伝的要因や外的要因の影響で起こることが多く、発生時期や程度によってさまざまな症状を示します。
先天性欠如による弊害
・咀嚼機能の低下
歯の本数が少ないと噛む力が弱くなり、食べ物を十分に消化できないことがあります。 これは消化器系や全身の健康にも影響を与える可能性があります。
・隣接歯への負担
欠如している部分に隣接歯が倒れ込んだり、向かい合う歯が伸びたりすることがあります。 すると歯の位置や角度が変わり、噛み合わせが悪くなります。欠如していることによって隣在歯には咬合力でも負担がかかります。
・咬合が不安定になる
正常な咬合では上下の歯が均等に咬合するので噛む力が分散されます。しかし欠如している歯があると噛む力が偏ります。すると他の歯や顎関節や筋肉に負担をかけることになり咬合が不安定になります。
・虫歯や歯周病のリスクが高まる
先天性欠如では、欠如している部分に隣接歯や向かい合う歯が移動したり、乳歯が残ったりすることで、歯並びが悪くなります。歯並びが悪くなると、歯磨きがしにくくなり、プラークや食べカスが溜まりやすく虫歯や歯周病の原因となります。
先天性欠如の治療方法
・入れ歯
入れ歯は欠如している部分を補うために部分入れ歯を選択されます。
入れ歯のため見た目や装着感に不満を感じる方もいます。 また定期的なメンテナンスや毎日の清掃を行う必要があります。
・インプラント
インプラントは、欠如している部分の顎の骨に人工的な根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工歯(インプラント冠)を装着する方法です。 インプラントは自然な見た目や噛み心地を得られる利点がありますが、自由診療で費用が高くなる場合もあります。
発達途中の子供には対応できません。
・ブリッジ
ブリッジは、欠如している部分の両隣の歯(支台)を削って人工的な歯(連結体)を固定する方法です。 ブリッジは支台となる歯が健康でも削る必要があります。
・矯正歯科
矯正歯科は、欠如している部分に歯を移動させて噛み合わせや歯並びを整える方法です。 歯並びによっては他の歯も抜歯する必要がある場合があります。